シンガポールにおける一般的な税制については、以下の通りです。
- 法人税
法人税率は一般的に17%となっています(日本は23.2%)。ただし、いくつかの優遇もあります。有名なものでは、スタートアップ向けの優遇であり、一定の要件(※1)を満たす企業は設立から3年間の間、10百万S$までは75%の免税、次の10百万S$までは50%の免税を受けることが出来ます。また、課税所得に影響を与える損金算入という観点では、有名なものでは、キャピタルゲインの非課税(※2)が挙げられますが、それ以外でも日本では役員報酬や交際費については、損金算入の際のルールが細かく定められておりますが、シンガポールでは事業に関連していれば、特に具体的な制限等はないこととなっています。 このようにシンガポールの法人税に関しては、日本よりも税率が一般的に低く、納税者に有利なルールも日本に比べると多くなっております。
- 個人所得税
個人所得税については、日本と同様に累進課税制度となっておりますが、最高税率は32万S$以上の所得に対する22%(日本は45%、住民税含めると55%)となっております。
シンガポールでは、給与に対する源泉徴収は行われないため、年間所得が22,000S$以上の人は、原則確定申告が必要となります。また、会社は源泉徴収を行いませんが、課税当局が提供するFormを使用して、給与所得を各従業員(一定以上の規模の会社は課税当局)に提出する必要があるので、注意が必要となります。 - 財・サービス税(GST)
現在の税率については、7%となっておりますが、2022年~2025年の間に9%へ引き上げられることが公表されております。輸出や一部国際サービスについては、輸出免税で0%となっており、日本の消費税制度と酷似しています。なお、申告の頻度については、日本とは異なり、四半期ごとが原則であり、各四半期末後、1か月以内の申告ということでスケジュールとしては、日本よりタイトな形となっています。
続いて、日本とシンガポールの間の租税条約については、以下の通りです。
まず、租税条約とは、2国間で締結される主に二重課税を回避し、国際的なビジネスを活発化させるための条約です。OECDが租税条約のモデルを出しており、日本が締結している租税条約の多くもOECDのモデルを参考に作成されております。
一方で、あくまで2国間の決め事であるため、OECDモデル条約との違いが各国の租税条約で出てくることもあります。
例えば、使用料に関する規程では、モデル条約では使用料を受け取る国側で課税が原則で使用料を支払う側での源泉は免税となる旨が最新のモデル条約ですが、日本とシンガポールでの租税条約上は、10%まで源泉税を取ることが認められています。
その他、主な取引に関して、租税条約で源泉税の料率が変更されるのは以下の通りです。
- 配当(所有割合が25%以上)・・・5%
- 配当(①以外の場合)・・・・・・15%
- 利子・・・・・・・・・・・・・・10%
そのため、例えばシンガポールに在住・もしくは本店がある会社に対して、配当を支払った場合、日本の法律では、非居住者に対する配当の源泉税が20.42%ですが、租税条約の規定が優先されますので、上記、①もしくは②に該当し、源泉税率が小さくなります。
租税条約を適用する際には、税務署へ「租税条約に関する届出書」の提出が事前に必要となりますので、注意が必要です。実際に、租税条約を適用する際には、国際関係の取引への理解が不可欠となりますので、専門家へ相談することをお勧めします。今後も租税条約に関して、改正等の情報が入ったり、日本側での非居住者に対する税制に関する変更があった場合には、随時情報をキャッチアップし、情報発信を行う予定です。